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心眼で見る


人は、視力の衰えはいたしかたないものだ。

有名なところでは画家のボナールの白内障である。

手術を受けた後に思い通りに見えないのに苛立ち、オレンジ色だか

なんだかの眼鏡をつくり調整していたらしい。

そこでよく考えてみると、画家は若い頃培ったデッサン力や色感というのが

体に染みついているから、その通りに見えないと気持ちが悪いのと、

昔の記憶のように見ようとする。つまり脳で記憶されているように

見ること。これが「心眼」なのだと私は思う。

ボナールも「心眼」で見ようとしていたのかもしれない。



高柳









補色残像現象


人は・・というより人間の目は不思議なもので、レンズを通して網膜に

映っている像がすべて上下逆さまであることは有名である。

その逆さまの像を脳がコントロールして正常に視ているのだ。

これは誰でも知っていることであるが、日常の中でそんなことを考えながら

物を見ている人はいない。

ところで、色の世界でも同じようなことが起こっている。

赤い色をしばらく見ていて、白い紙に目を移すと「青緑」がはっきり見える

「補色残像現象」という実験がある。

その逆「青緑」→「赤」もまた然り。

このように12色相環全ては、逆の色、つまり補色が美しい残像となって

見えてくるから不思議である。

大学で教えているころ、学生がこの実験をやるとキャーキャー喜び、先生の

人気があがった。

原因はまだ解らないらしいが、なんとも美しい実験なのだ。

年とともに視力低下の今日この頃、思い出すのはこんなロマンチックな実験

なのである。



高柳








バナナのような手


バナナのような手を描いてはいけない、とマチスは言った。

しかし当のマチスの描く「手」は、まさしくバナナのようであった。

とマン・レイが面白おかしくエピソードを語っていた。

こういうことはよくあることで、人は何かを語る時、

自分を語っていることが多い。



高柳











アンビバレンス


月満つれば則ち欠け

物盛んなれば則ち衰う

昔からよく言われているこの格言は、現代で言えばアンビバレンスであろう。

私などはすぐに有頂天になるから、戒めになる。

ピカソは絵を完成させるとすぐに壊し、また完成させては壊していた。

この繰り返しはピカソの絵を語る上で欠かせないし、十分に説得力がある。

そう考えると、ますますピカソは偉大である。

ああ、ピカソ、 ambivalence !


高柳

















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版画家高柳とエクレア

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