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ピカソになりきった男 ギィ・リブ


「ギィ・リブ」の伝記というか、カミング・アウトしたような本を読んだ。

「ギィ・リブ」はフランス人、画家で世界一(?)の天才贋作名人。

ピカソ・マチス・ミロ・ダリ・・・ありとあらゆる有名画家の絵をまねて数万点が

世界中に出回っていて、ついにフランス警察に逮捕されるまでを実名入りで赤裸々に

綴っている。

なぜこの本に興味を抱いたかというと、私が今版画家として熱を入れているのが

「My Faivorite Artists」シリーズだからである。ピカソ・マチス・ミロ・ダリ・・・

は私の作品に頻繁に顔を出す。


ここで考えさせられるのは、「オリジナリティー」とは一体何なのか?である。

私の芸大の先輩の何人かも贋作作家のレッテルをはられたのは、ニュースで

目新しい事件であった。

話を戻すが、ギィ・リブの手法は単なる模倣ではない。つまり、ピカソの絵を見ながら

そっくり描いて、ピカソのサインを入れ、人を騙して売りさばくのではないのである。

ピカソ・マチス・・・も描いたことのないピカソ・マチス・・・を描いてしまう。

ピカソが生きていたら、「私はこんな絵をいつ描いたのだろう?」と何の疑いもなく

本人もだませるほど「うまい」のである。


オマージュ、という言葉がある。

尊敬してピカソを描き、オマージュピカソとサインすればよいのである。その場合は

当然ギィ・リブのサインが入る。

ところが彼はピカソとサインする。しかもサインもピカソ以上にそっくり。

これは紛れもなくダメである。

だから偽札のように世界中に広がる。偽札はいずれ足がつくし、本物との違いが

科学的に明らかになるが、ギィ・リブ作のピカソは一流の鑑定士まで巻き込んで

いるから始末が悪い。


私の話に戻るが

私の作品は、ピカソ、マチス・・・の「考え方」をモチーフにしている。

作品はピカソやマチスに見えなくてはならない。が、作者は「私」でなくてはならない。

絵はピカソやマチスを感じさせ、本人のものかな?と思わせなくてはならず、時には

サインまで絵の中に登場する。

しかし!ここが大切なのだが、出来上がったものはあくまでも「高柳版画」でなくては

ならないのである。


ここまで書いてますます混迷するのは、「オリジナリティー」という言葉である。

きりがないのだ。




高柳








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版画家高柳とエクレア

Author:版画家高柳とエクレア
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