一筆書き その2(頭をなるべく使わずに描く)
私は絵を描くとき、何を描くか決めることがあまりない。
つまりモチーフの消滅というか、消失というか、これは私だけの問題である。
版画制作のときはそんなことはない。出来ない。
しかし水彩だのガッシュだの手描きのときはそれが起こる。
そこで、描くのが便利でとりとめなく手が動き、何やら「心」がハッとする一筆描きが登場する。
油絵画家の中に「捨て絵具」ということをする人がいる。私もよく昔やったことがある。
白いキャンバスに向かうとプレッシャーのあまり手が動かなくなる。それを取り除くため
純白のキャンバスに余った絵の具などこすりつけて、故意に汚すのである。
すると「古キャン(使い古したキャンバス)」になる。だから安心して手が動く。
なんだか情けないような技法ではあるが、「安心」は大切である。
さて、安心から出発したものの、やがて行き詰まり「心配」になる。
安心と心配の繰り返しが私の技法である。
高柳