花を描く
カルチャーセンターで油絵の講師をしていたころ、花をよく描かせていた。
手っ取り早いモチーフなのである。
受講生の方も、花を出されて文句を言う人はいない。
ところで、私は花が苦手である。
今まで何十年の間、「花」をまともに描いたことはほとんどない。
桜が美しいと思ったこともない。甚だ怪しい先生なのである。
日本画、洋画の大家も花のモチーフは多い。
花は美しいもの、と決めているがごとくに描いている。
ところがある日、ポール・クレーのレゾネ(全作品目録)を見ていてびっくりした。
たくさんの花が登場している。しかし「花」には見えない不思議な「花」ばかりである。
ほとんど図形化された花、図法の花、論理の花なのだ。
今まで花嫌いな私が見ていた花はいったい何だったのか・・・
以来、私は花の見方が一変した。今ではどんな花も不思議に魅力的に思えてくる。
昔の花はもうどこかに行ってしまった。一体どこへ行ってしまったのだろう・・・
ジョン・バエズの歌(「花はどこへ行った」)が聞こえてくるようだ。
高柳