Macro Cosmos (大宇宙)宇宙は果てしなく広く暗い
高柳裕と若手版画家たち展2021


ひぐらしの絶滅
蝉
prologue
惜しいー物や人、機会などが失われるのを残念に思うさま
英語 almost!(残念!もうちょい!)
蝉 cicada(シッケイダ)発音は難しい
蝉が鳴いている。
8月末日だから「つくつくぼうし」である。
透明な羽を持ち、大小の小指大の細身の美しい蝉である。
窓越しに代わる代わる飛んで来て鳴く。
うるさい。失敬だ!cicada
あまりうるさいので時間を計ってみた。
鳴き始めから終わりまでの所要時間である。
私は運動をするから頭の中で数を数えるのは得意である。
最初、ツク、ツク、ツク、と静かに鳴き始める。
これはいわば助走である。これが2~3秒 そして
一気にオーシィツクツク オーシィツクツク とくる。10~20秒
そして転調する。オーシィヨー オーシィーヨー
オーシィーヨーシで終わる。所要時間は長くて25秒
終わるや否やパッ!といなくなる。急ぎ働きである。
また新しいのが来た。目の前で鳴いている。
つくづく、つくづく(惜しい、つくづく)(惜しい、つくづく)
惜しいよー 惜しいよー チッ!
チッ!は飛び去る寸前のオシッコの音。失敬だ!cicada
epilogue
蝉は鳴くのはオスである。
メスを探しているのだ。
たかが20秒でメスが見つかるのか?
でも、惜しいよーもうチョイ、と今日も鳴いている。
高柳
朝顔や つるべ取られて もらひ水 -加賀の千代女
prologue
「きゅうり」の苗をいただいた。
有機土を購入、荒れた庭の片隅に移植した。
細い丸い支柱も一本立てた。
水もやった。
万全である。
~~~
ある朝水やりに見に行くと、目を見張る光景に出会い、衝撃を受けた。
細長い支柱にまるで精密機械のように一本のつるが巻き付いていた。
まだ白水色のつるの先端は、朝の光の中で幾重にもけなげにきっちり巻き付いている。
その様を目にした私は、見知らぬ赤ん坊に不意に心臓を掴まれたような、人に見られたらいけないような、恥ずかしいようなショックを受け、立ちすくんだ。
考えてみれば遠い昔、忘れかけていた生物の新鮮な生命力を久々に感じた、ということなのだろう。
それにしても、きゅうりに一本取られたようである。
まだ一本もなっていないが。
epilogue
きゅうりは順調に育っていた。
背の高さに伸びて、花もつけていた。
大切に大切に育てた。
ネットも買った。ジョウロも買った。
剪定の仕方も教わった。
下の方の要らない葉は取り、わき芽も取らなくてはならない。
わき目もふらずやっていた。それがいけなかった。
魔が差した。
調子に乗って剪定していて思わずパチンと切ったのは、本体であった。
急患場(キューカンバ)‼
慌てて本体を土に差し込んだが時すでに遅し。
きゅうり栽培は夢と消えた。
傷心のまま、今はバジルとトマトを育てている。
トマドいながら。
高柳
ねずみ
バンクシーがまた描いた。
地下鉄車両の片隅に。
ねずみがマスクをしている図、とねずみがクシャミをしている図の2点である。
それにしても、車両にもぐり込み
人目を避けて、すばやく描いた様子は
バンクシーの手口(a touch of Banksy)の鮮やかさが見てとれる。
「朝日新聞」によれば、当局の法に基づき、ねずみもマスクも直ちに消し去られたらしい。
「マスク、消しマスク!」
マウスわけありません!と言ったかどうか・・
高柳